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ワタナヴェの空間
Night and Day/While You Were(sensorium) ケーススタディ ケーススタディ



僕らは過去から未来へと流れている時間を、ふだんはどんな風に感じているだろう? 大抵の人は時計という道具を通して、と答えるに違いない。時計は時間をインフォームする、最も古くからある情報機械の一つだ。太古の昔、僕らの祖先は、太陽が東の地平線から昇り、西へと沈むという毎日繰り返される事象をはじめとして、ゆったりと刻まれる自然のリズムに、いつしか時間という概念を見出したのだろう。そして、時計や暦などといった発明は、この目に見えない時間という情報をカタチにするデザインの営みだったわけだ。

でも、いつの間にか、僕らは時間という情報の「絶対性」に縛られ、コントロールされてしまってはいないだろうか? いまの産業社会の基礎がほぼ形づくられた19世紀の終わり頃から、時間はある統一的な基準やシステムによってネットワーク化され、またそれらがパーソナルなレベルにも浸透していくことになった。鉄道や電信といった交通と通信のネットワークは、地域でバラバラだった時間の流れを統一的な基準(いわゆる標準時というやつだ)に同期することを求め、機械工業の進展によって可能になった時計の大量生産、特に最初の“ウェアラブル”な情報機械となった腕時計の登場は、人々に規則正しく進む時間感覚へと「教育」していった。たった一世紀ほどの間に、この惑星の上は実に厳密で揺るぎない「絶対精度」の時間というシステムに覆い尽くされてしまったようにも思える。

もちろん、そうはいっても人が感じられる時間のあり方は本質的に千差万別のはず。いや、僕らが暮らすこの世界に存在する様々なモノには、そもそも時計が淡々と刻む時間とは全く別のリズムや流れがある。そんな当たり前だが見過ごしがちのことに、少しだけセンスを向けてみようじゃないか? 僕も関わってきた「センソリウム(sensorium)」というウェブプロジェクトでは、僕らがふだん感じるのとはちょっと違う時間の感覚を喚起させてくれる、いくつかのデザインを試みたことがある。

センソリウムは1996年からスタートした活動で、メンバーとしては人類学者やプランナー、デザイナー、メディアアーティスト、エンジニアなど、実に多彩な職能をもった十数人が名を連ねる。これまでにウェブ上でいくつかの実験的な表現を展開してきたほかに、欧米ではインスタレーション型の作品も発表している。そんな中に、「時間テーマ」の作品が2つある。

インターネットが拡がってきたことで、僕らの世界に対する間合いの取り方というか、モノゴトの感じ方は今までと随分変わってきた。リアルタイムと非リアルタイムのコミュニケーションとが混在するインターネットの中には、実はここだからこそできる独特の時間表現がある。世界中の街角や自然の風景を映しだすウェブカム(ライブカメラ)。センソリウムでは、このウェブカムの画像を地球の丸み(経度)に沿ってグルリと並べ、プログラムで自動更新するようにしてみた。これが「Night and Day」。20数カ所のウェブカムで構成される画面は、自然と地球の夜と昼をクッキリと示すことになる。言ってみれば、インターネットを通して地球大のナチュラルクロックがつくれたことになる。

もう一つの時間をテーマにした作品「While You Were」は、一昨年にオーストリアの小さな街で開かれた展覧会に、「アルス・エレクトロニカ・センター」というメディアアート系の研究制作機関の求めに応じて出展したもの。展覧会場の入口に、刻々と変化していく世界の様々な出来事の数値情報を表示し続ける大型のディスプレイを置いたほか、ビジターが展覧会場に滞在した時間をカウントし、チェックアウト時にちょっと変わった「レシート」をプリントアウトして手渡しするようになっている。そのレシートには、「あなたがこの会場にいた間に、世界ではこんなことがありました」と、地球の自転の変化やアルプス山脈の隆起、世界中で生まれた子供の数、飛び立った飛行機の数、地上から消え去った生物種の数、といった情報がメッセージングされる。

レシートを受け取った人の反応は、その場でふと立ち止まり、真剣な顔で読み出す人もいれば、一緒に来た友人とニヤニヤしながら互いの結果を見比べたりと、実に様々。この人達が感じる様々な「想い」こそが、世界に流れる多様な時間に対するセンス、ということになるのだろう。実はこのWhile You Were、最近では同じオーストリアのインスブルックのあるイベントにも出展されたほか、欧州の別の国の文化施設にも新しいバージョンを入れる計画が進行中。どんなモノが出来上がるのか、お披露目できる段階が来たらここでまた報告したい。

....などと書いているうちに、僕の住んでいる場所は再び太陽が当たる側に近づき始めた(いま午前5時ちょっと前)。こうしている間にも、世界の他の場所では新しい生命が生まれたり、死んだり、モノが生産されたり、捨てられたり、情報が行き交っているんだろうなぁ。

http://www.sensorium.org/

【ナイト・アンド・デイ/ホワイル・ユウ・ワー】


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2002/6/9更新
2002/6/9 登録
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